賃貸管理会社の理解:募集(退去を引き留める)
賃貸管理会社の重要な役目の一つが、入居者募集業務です。しかし、入居者募集の前にやることがあります。既存の入居者を簡単に退去させないことです。管理をしている上でのクレームに素早く対処することもありますが、退去連絡・退去通知を受け取った時が重要なのです。
退去して新規の入居者を獲得するコストと、退去を引き留めるコストのどちらが高いでしょうか?
新規募集コストは、引き留めコストの倍以上かかる
新規募集する際には、下記費用がかかります。
【新規募集コスト】
・原状回復費用:2〜4か月前後
・空室期間:1か月〜
・広告費:1〜2か月
・フリーレント:1〜2か月
合計:5か月〜12か月程度
少なく見積もっても5か月分程度、多ければ、12が月分以上の費用がかかります。特に、原状回復費用は高いので、リフォームコストが経営を圧迫するケースがよくあります。そして、空室期間には一切家賃は入っていないので、空室期間が長ければ、その分損失となります。
【引き留めコスト】
退去を引き留めるリテンションの施策は、下記のようなものです。
・更新料を無料にする:1か月
・さらに2年住んでもらえるなら、商品券:1か月
※フリーレントは、保証会社が入っていたりすると難しいので、商品券等でプレゼントする
・設備のグレード(給湯器交換、ウォッシュレット追加)を上げる:2か月内
こちらは、合計ではないので、入居者のタイミングやいままでの設備の不満を解消してあげればいいので、費用としては、家賃2か月程度のものでしょう。
【比較してみると】
新規募集コストより、引き留めコストの方が圧倒的に安いのです。みなさも経験があるかと思いますが、クレジットカード会社は、優良な顧客であれば、ゴールドカードを解約したいというと、翌年の会員費が無料になったりします。新規顧客を獲得するコストと解約を阻止するコストを比較してどちらが良いかを投資対効果で判断しています。
賃貸経営も同じです。退去だからといって、どうぞというわけにはいきません。
退去連絡受領時の引き留め(リテンション)を徹底させる
全国空き家だらけで空室に困っていない大家はいないと言えます。その中で退去連絡を受けた管理会社が「はい、わかりました」で終わりにしては困ります。
賃貸経営者が望んでいる対応は、退去の理由を聞き、可能であれば慰留すること。たとえば「家賃が高い」という返答があったとしたら「ちょっと待ってください、それでしたら私どもで大家さんと交渉してみましょうか」と提案して引き留めてもらうことは、今後必須の能力となります。退去する入居者がクレーマー等でトラブルメーカーであれば早く出ていってもらいたいですが、それ以外は、引き留めをしてもらいましょう。
しかし、管理会社はそう簡単に動いてはくれません。なぜか? 管理会社は、どこで利益を得ているかというと、管理料ではないのです。原状回復費や、募集して決まった時の仲介手数料、広告費が収益の大半を占めているのです。
したがって、管理会社は、あまり、積極的に退去を引き留めるということをしてくれません。そのため、誰が動くのか? といえば、あなたしかいません。
繰り返し、退去時には、この退去引き留めプランを提示してくれとお願いし、教育するしかありません。管理会社の担当の多くは、地主や不動産投資家は儲かっているとしか思っていません。大家は、空室になると新規募集にかかわるコストが経営を圧迫しており、一人でも長く住んでほしいことをアピールするのです。
そこには、大家として「入居者に快適に長く住んでもらう」という根本を共有しないといけません。人というのは単にコストだけを語る人には、あまり共感しないのです。
賃貸経営でも
・新規募集するコスト
・解約を引き留めるコスト
の違いを理解して、経営をすることが今後の経営の成功を左右することになるでしょう。
まとめ
・新規募集するコストは、高いことを知る
・管理会社に退去を引き留めを徹底的に教育すること
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