物件資料の読み方:登記簿謄本の記載を理解する
登記簿謄本が、第3者に権利を主張=対抗するものというのが理解できたら、具体的に登記簿謄本に記載されている項目がどのような内容になっているのかをある程度で良いので理解しておきましょう。ポイントはそれほどないので、どのような視点でみればいいかを簡単に解説します。
登記簿謄本
登記簿謄本は、1つの土地または建物ごとに記録されます。登記簿謄本は、大きく分けると、「表題部」「権利部甲区」「権利部乙区」に分かれます。表題部は、不動産の表示について記載されており、権利部は、権利関係についての表示が記載されています。
【表題部とは】
表題部とは、不動産(土地または建物)の所在や地積など不動産の状況を表しているものです。物件資料を取り寄せた時に、もらう物件概要書にも記載されている土地・建物の情報と同じ内容になっています。
・どのような構造の不動産か
・どれくらいの大きさの土地、建物か
したがって、表題部を見れば、物件概要書記載の土地、建物が間違っていないかを確認できます。
【土地の表題部】
土地の「所在」「地番」「地目」「地積」などが記載してあります。
・「所在」:土地の所在地が書かれています
・「地番」:一筆ごとに元々土地につけられていた番号のこと。実際の住所表示とは異なるので注意してください
・「地目」:その土地が何のために使われているか、「田」「畑」「宅地」「山林」などその土地の利用目的を表しているものです。これは、現在宅地利用されていても、田、畑になっていることはよくありますが、特に問題ありません。単に、修正登記をしていないだけのことです。
・「地積」:土地の面積。物件概要書の土地の面積とあっていることを確認します
【建物の表題部】
建物は、「所在」、「地番」、「家屋番号」、「建物の種類」、「構造」、「床面積」、「付属建物の表示」などが表記されています。
・家屋番号:建物を特定するための番号のことです。土地と同じように建物にも「家屋番号」という番号が付けられています。何個もの建物が建っている場合には、「XX番の1」「XX番の2」などと表記されます。
・種類:建物の使われ方を表しています。収益不動産でいえば、戸建ての「居宅」、アパートの「共同住宅」、事務所・店舗ビルの「事務所」・「店舗」になります。
・構造:「木造」「鉄骨造」「鉄筋コンクリート造」など建物の構造と屋根の種類、階数が表記されています。
・床面積:各階ごとの面積。注意点としては、実際の建物と登記簿記載の建物の大きさが異なるケースがあります。よくあるのは、車庫で登記していたが、車庫部分を事務所利用している場合などです。この場合は、容積率オーバーの違反物件の可能性が高くなりますので、不動産業者に確認するポイントです。
・付属建物の表示:車庫や倉庫など建物に付属する建物がある場合に表記されます。
権利部甲区
登記簿謄本で一番重要な権利部の甲区の欄です。
【甲区には所有権に関する権利が記載】
「甲区」(権利部甲区)は、登記簿謄本の中で一番大切な権利に関係する登記がされています。アパートを購入したら、所有権移転の登記を行い、「甲区」に所有者が自分であることが記録されるのです。
【甲区に記載されている事項】
甲区に記載されている事項は、「順位番号」「登記の目的」「受付年月日・受付番号」「原因」「権利者その他の事項」です。
・順位番号
順位番号は、登記された順番を表しています。この順位番号によって、権利の優劣が決まってくる大切なものです。特に乙区では、この順位番号が権利関係を見る上でとても重要になってきます。
・登記の目的
中古物件を購入するときは、「所有権移転」となり、建物を新築する場合は、「所有権保存」など登記する目的を表しているものです。
・受付年月日・受付番号
受付年月日は、登記を受付けした日付です。受付番号は、受付けした登記に付けられる番号です。これらの日付は登記の優劣を決めるときに、大切になってきます。
・原因
所有権に関する権利をどのように得たかの原因を示しています。「売買」「相続」「贈与」などが挙げられます。
・権利者その他の事項
権利者が誰かを表しています。所有権移転したら、自分が所有者であることがわかるように、所有者の名前が記載されます。持ち分の場合は、持ち分を持っている人全員が持ち分とともに名前が記載されます。
甲区でだれに所有権があるのかわかる!
「所有権」は、ひとつの不動産について一つしか成立できない強い権利です。そのため、不動産の権利を見るときに、この甲区で記載されている所有者がだれか? がとても重要なのです。
権利部乙区
「乙区」では、不動産の所有権以外の権利に関する事項が記載されています。
所有権以外の権利が記載されている
アパートなどの不動産投資の際には、不動産の「所有権」とは別に、いろいろな権利が発生します。銀行には、その不動産に対する抵当権や根抵当権、質権などの「担保権」や土地の所有者に対する地上権や賃借権などの「用益権」などがあります。
- 担保権は、借入(債務)が返済できなかった場合に、その不動産を売却してその代金から返済を受けることの出来る権利です。通常は銀行が担保権を持っています。個人が貸し手であれば、個人でももちろん設定は可能です。
- 用益権は他人の不動産の使用ができる権利のこと
所有権は、ひとつの不動産に一つしか権利がありませんが、抵当権や用益権は一つの不動産に複数権利が存在することができます。
乙区に記載されている事項
乙区は、「順位番号」「登記の目的」「受付年月日・受付番号」「原因」「権利者その他の事項」です。
・順位番号
順位番号は、「登記された順番を表していて権利関係の優劣を決めるもの」です。順位がとても重要な意味を持っており、誰がその不動産に優先的な権利を持っているかはこの登記の順位番号によって決まります。
よくある例です。自宅をA銀行に抵当権を入れている状況で、不動産投資を開始しました。収益不動産には、B銀行が融資を付けてくれましたが、自宅にも共同担保として抵当に入れたいというケースです。収益不動産の担保評価が不足していると、自宅に余力がある場合は、2番抵当でもいいので、抵当に入れる場合があります。
そうすると、自宅に対しては、
・A銀行は1番抵当権
・B銀行は2番抵当権
が登記されます。この場合は、自宅の不動産に対しては、A銀行に優先権があり、A銀行の債権が優先的に返済されることになります。
・登記の目的
所有権以外の権利についてどんな目的で登記がされたのか?を表しています。
・受付年月日・受付番号
受付年月日は、登記を受付けした日付です。受付番号は、受付けした登記に付けられる番号です。これらの日付は登記の優劣を決めるときに、大切になってきます。
・原因
権利を得た原因を記載しています。抵当権の場合であれば、お金を借りる契約をしたことが原因となりますので、お金を借りる際に契約した「金銭消費貸借」という文言が入ります。
・権利者その他の事項
権利の内容について記録されています。収益不動産を購入する際には、ここは必ず見ておきましょう。売主が銀行から借り入れている場合は、銀行の抵当権がありますし、無借金ならここに記載がありません。抵当権が入っている場合には、「債権額」「利息」「損害金」「債務者」「抵当権者」などが記載されますが、一番重要なのは、「債権額」と「利息」です。
ここをみることで、売主の状況が推測できるようになります。債権額は設定した日なので、年月が経過していたら、その分を割り引いて、どのくらいの残債が残っているかを推測するのです。なぜ、残債をチェックをするかというと、残債よりも低い金額だと、買付が通らない可能性が高いからです。
収益不動産を売却した際に、借り入れが全額返済できなければ、売却自体が成り立たないからです。そのため、この残債がどれくらいあるかは、概算ではじくようにします。
だからといって、この残債まで価格が下がるわけではありませんが、価格交渉ができるかどうかを見極めるポイントになります。
まとめ
・登記簿謄本は、物件概要書のチェックに使う
・特に床面積が、容積率の範囲内に収まっているかを確認する
・売主の残債の額を推定し、値下げ可能性があるかの検証を行う
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