差し押えされている不動産投資物件の注意点について

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差し押え登記がされている場合の注意点

不動産を購入する際には、売買契約前の重要事項説明において、必ず登記記録に関する説明が入りますが、このときに万が一「差押」という文字が記載されていたら要注意です。競売物件を購入する場合は金融機関や国に差し押さえられたリしているのは当たり前ですが、競売以外で購入しようとしている不動産が、他人から差押えられていた場合は要注意です。

 

では、万が一購入しようとしている不動産が「差押え物件」だった場合、どのような手順で手続きを行えば良いのでしょうか。

 

差押登記とは
不動産に対する差押登記とは、その所有者が何らかの支払いを滞納していて、その債権者が滞納分を回収するために、債務者の財産である不動産を売却したり人に貸したりして滞納金額を回収するときにする登記です。

 

差押物件をそのまま購入すると、売主が債権者に対してお金を全額返済しなければ、最終的にその不動産は強制的に売却され、あなたはその所有権を失うことになってしまうのです。だから、不動産売買のときの差し押さえはよく注意すべきなのです。

 

よくある差押えの原因とは
不動産の差押えとしてよくあるケースは概ね以下の2点です。

 

@税金の滞納
所得税、贈与税、住民税、相続税など国民が国に納めなければならない税金はたくさんありますが、これらの税金を滞納しつづけると、最終的にはその人の財産に対して強制執行がかかります。

 

すなわち、強制的に売却してお金に換えて納税させられるのです。この場合、登記記録には差押の債権者が国、都道府県、市区町村の名前になっていますのですぐに分かります。

 

A抵当権の実行
売主が住宅ローンやアパートローンを利用して不動産を購入している場合に、ローンの支払いが滞ると不動産に抵当権を設定している銀行が、抵当権を実行しその不動産を差押えてしまいます。こうなると通常は時間の問題で競売になってしまいます。

 

 

差押え物件を購入する際のスキーム
差押登記がされている物件を購入する際には、その引き渡しの日までに必ず差押登記を抹消してもらわなければなりません。ではどうすれば差押登記を抹消してもらうことができるのでしょうか。

 

答えは簡単です。借金を「全額返済」すれば良いのです。

 

ただ、残念なことに売主には税金や借金を一括で支払うお金がないのです。だから不動産を売ってそれらを精算しようとしているのです。まずはそこをよく理解しましょう。

 

ということは、差押登記の抹消は次のような順序となります。

 

ステップ1:買主が売買代金を全額支払う
ステップ2:売主は受領した売買代金を使って税金や借金を完済する
ステップ3:債権者が差押登記を抹消する

 

ただ、この通りの順番で手続きをすると、万が一売買代金を売主が使い込んだらアウトです。ですので、実務ではこれら3つの手続きをすべて同時に行なう必要があるのです。

 

通常、売買の決済時には売主、買主、それぞれの仲介に入っている不動産業者、そして司法書士が立会い、残代金の支払いと同時に所有権を移転させます。ちなみに、これを「同時履行」と言います。

 

これに対し差押物件の場合は、これに加えて「債権者」も同席する事になります。すなわち、税金であれば税務署の職員、金融機関であれば担当者などが同席します。場合によってはこれらの債権者の場所が決済の手続き会場となるケースもあります。

 

そして、その場で差押している債権者に対して税金や借金を返済し、それと同時に領収書と差押を解除するために必要な「解除通知書」をもらいます。

 

これがポイントです。差押登記を抹消するには、債権者からこれを必ずもらわなければなりません。そしてそれをその場にいる司法書士に渡して差押の抹消と所有権の移転登記を同時に行なってもらい終了となります。

 

たとえ差押えがされている物件でも、このようにすべてを目の前で同時に行なえば、その場ですべて完結します。あとは、当日にすべての登記手続きが完了するよう、必要となる書類を司法書士の指示のもと確実に揃えておくように注意しましょう。

 

競売物件落札について
私もずいぶん前になりますが、こここまで高値になる前には、競売によく参加していました。競売では、差押えられた物件を購入する手段の一つになっています。競売とは簡単に言えば、裁判所が主催する不動産のオークションのようなものです。ここで落札者が支払う代金が所有者の借金返済に充てられます。

 

そして、競売で落札して全額を支払うと、裁判所が職権で登記してくれますので、司法書士に依頼したり、大勢が同時に集まる必要もありません。さすがに裁判所は信頼して大丈夫です。あとは裁判所から「登記識別情報通知書」が送られてきます。これが権利証となりますので大切に保管しましょう。

 

しかし、競売手続きはこれで終わりではなく、「物件の引き渡し」が問題となります。

 

通常の売買であれば、物件のカギなど必要なものが売主から引き渡されますが、競売ではそのような丁寧なことはされません。競売物件落札時の注意点とはまさに「引き渡しはすべて自力でしなければならない」ということなのです。これこそが競売物件最大のリスクなのです。

 

ですから、競売物件を落札する際には、事前に裁判所がウェブで公開している「現況調査報告書」を良く確認し、購入後の引き渡しに支障がありそうかどうかをしっかりと見極めてから最終判断を下すようにしましょう。

 

まとめ
・差押登記は必ず抹消してもらう必要があり、買主・売主・債権者が同日に手続きを完了する必要がある
・競売では、物件の引き渡しを自力で実施する必要がある(強制執行含め)

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