不動産投資の築古アパートのデットクロスについて

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デットクロスの恐怖:築古アパートのケース

築古の高利回りの投資は、とても魅力的な投資です。現金で購入していれば、高利回りですから、税金を払ってでも手元に残るキャッシュが多くなります。しかし、借入をして投資をした場合には、かなり注意を要します。

 

デットクロスとは
 デットクロスとは、家賃収入に対する課税金額と実際のキャッシュフローが逆転しまう現象をいうものです。やや難しい概念で、ほとんどの方が意識していないのは、税金の計算と実際のキャッシュフローが異なるためなのと、初期の時点では問題がよくわからないからです。

 

デットクロスは、利回りがあまり高くない物件に無理に融資を付けると起こりやすいですが、起こりやすい物件の代表格としては下記があります。

 

・築古物件:木造や軽量鉄骨、重量鉄骨に法定耐用年数オーバーで融資を付けている場合。
 ※RCで法定耐用年数超に融資を受ければ起こりますが、木造に比較するとそのような物件は少ない

 

・新築アパート:新築アパートに22年を超える融資を受けている場合

 

どのようにデットクロスが起きるかを理解するには、税金の計算と実際のキャッシュフローの関係をおさらいしておく必要があります。

 

 

税金の計算と実際のキャッシュフロー(税引き後)
それでは、税金の計算と実際のキャッシュフローの違いを理解してから、築古木造のデットクロスの怖さを理解していきましょう。

 

例:築古アパート、建物の減価償却が4年と短く、減価償却が多大にあるケース
 家賃収入100万、経費(利息以外すべて)30万、利息20万、元金返済40万、減価償却50万を想定

 

【税金の計算】
・売上(+)
  家賃収入:100万

 

・経費(−)
  経費(利息以外すべて):30万
  利息経費:20万
  減価償却費:50万
  ※元金返済分は、支出しているが、経費ならない
  計 100 万

 

・税引き前利益(売上100万−経費100万):0万

 

・税金(−)
 税率30%:0万

 

・税引き後利益:0万

 

 

【実際のキャッシュフロー(税引き後)】
・売上(+)
 家賃収入:100万

 

・支出(−)
 経費(利息以外すべて):30万
 利息経費:20万
 元金返済:40万
 ※減価償却費の40万は経費になるが、実際には支出していない
 計 90万

 

・税金(−)
 税率30%:0万

 

・税引き後のキャッシュフロー(売上100万−支出90万−税金0万):10万

 

 

上記例では、決算上の税引き後の利益は”0万”となるケースです。減価償却で利益を圧縮していることになるので、実際の手残りのキャッシュフローは10万と多くなっています。

 

これが、4年が経過して、減価償却費用がなくなった場合は、どうなるか見ていきましょう。次がデットクロスとなる瞬間です。

 

築古アパートは5年目にデットクロスしやすい

 

5年経過後の、税金の計算と実際のキャッシュフローを見ていくと驚きの結果になります。収入や経費等にはまったく変化がなかったとします。減価償却が0円になるが、ローンは続いている状況です。これは木造投資をしている人には良くあるケースでしょう。

 

【税金の計算】
・売上(+)
  家賃収入:100万

 

・経費(−)
  経費(利息以外すべて):30万
  利息経費:20万
  減価償却費:0万
  ※元金返済分は、支出しているが、経費ならない
  計 50万

 

・税引き前利益(売上100万−経費50万):50万

 

・税金(−)
 税率30%:15万

 

・税引き後利益:35万

 

 

【実際のキャッシュフロー(税引き後)】
・売上(+)
 家賃収入:100万

 

・支出(−)
 経費(利息以外すべて):30万
 利息経費:20万
 元金返済:40万
 計 90万

 

・税金(−)
 税率30%:15万

 

・税引き後のキャッシュフロー(売上100万−支出90万−税金15万):▲5万

 

 

これが、デットクロスです。築古アパート投資をしていて、融資を付けると、返済比率が高いケースがよくあります。上記の例ですと返済比率が60%程度になっています。これくらいの融資を受けることがアパート投資では十分に考えられる水準でしょう。

 

このような投資では、最初の減価償却が使える4年間は利益がほとんどなく、実際のキャッシュフロー(税引き後)が黒字になります。しかし、5年目になると減価償却費がなくなってしまうと、実際のキャッシュフローは、赤字に転落する可能性が十分にあり得る水準となります。

 

また、取得後、5年目になると家賃収入が下落すると大変なことになります。家賃収入が10%落ちると、赤字幅が大きくなります。

 

【税金の計算】
・売上(+)
  家賃収入:90万

 

・経費(−)
  経費(利息以外すべて):30万
  利息経費:20万
  減価償却費:0万
  ※元金返済分は、支出しているが、経費ならない
  計 50万

 

・税引き前利益(売上90万−経費50万):40万

 

・税金(−)
 税率30%:12万

 

・税引き後利益:28万

 

 

【実際のキャッシュフロー(税引き後)】
・売上(+)
 家賃収入:90万

 

・支出(−)
 経費(利息以外すべて):30万
 利息経費:20万
 元金返済:40万
 計 90万

 

・税金(−)
 税率30%:12万

 

・税引き後のキャッシュフロー(売上90万−支出90万−税金15万):▲15万

 

利益が黒字でも、実際のキャッシュフローが赤字になることをデットクロスと呼びます。このような状態になりますと、月々ほかの所得から不動産の賃貸業に赤字を補てんしないといけません。そして、銀行は、不動産経営者として、失格の烙印を押されることになります。

 

つまり、デットクロスした物件を保有し続けることはできません。こなりますと対処の方法は以下となります。

 

デットクロスした築古アパートへの対処
築古アパートでデットクロスした場合の対処方法は、2つしかありません。売却か減価償却できる資産を買い増しすることです。

 

@売却
 残債以上で売却することになりますが、この時に気を付けないといけないのは、建物の減価償却がゼロのため、売却にも利益が出やすいのです。売却するとしても、残債+売却益が支払える金額で売却していかないといけません。

 

 例えば、1億の物件が建物4000万、土地6000万、ローン1億、金利3%、融資期間20年で借りて、5年後に売却する場合を考えてみます。

 

【決算上】
資産
 ・土地6000万 のみ

 

借入
 ・8300万(4年経過後)

 

この時に、借り入れの残っている8300万で売却した場合、どれくらいの税金が発生するかというと

 

【個人】
・短期譲渡:(売却価額8300万−決算上の簿価6000万−取得費300万程度)*40%=800万! の税金
・長期譲渡:(売却価額8300万−決算上の簿価6000万−取得費300万程度)*20%=400万! の税金

 

4年経過したタイミングでは、短期譲渡になってしまい借り入れを返済できる金額だけで売却すると800万の納税資金を別で確保しなくてはならなくなります。

 

したがって、売却益にかかる税金も考慮し、売却価格を決めないといけませんし、長期譲渡まで待つのであれば5年経過後に、売却しないといけません。

 

そのため、築古アパートを購入する場合は、デットクロスと売却益に対する納税の両方を考慮して購入しないといけません。

 

 

A減価償却できる資産を購入する
売却以外でデットクロスを回避していくには、減価償却できる資産を購入していくことになります。例えば、太陽光発電のような設備です。太陽光発電は、法人であれば、特別償却で100%もしくは30%を即時に償却できるため、利益を圧縮できるからです。

 

もしくは、中古のアパートをさらに追加で購入し、1棟目の利益と2棟目の利益を圧縮していくことで、キャッシュフローを出していきます。ただし、中古アパートの減価償却を使うとなると、4年ごとに以前保有している物件の利益を圧縮できる大きい減価償却を取らないといけないため、アパートの規模をどんどん大きくしていかないといけません。

 

RCも同様にデットクロスになることはありますが、RCはデットクロスまでの時間が築古アパートよりも長いため、対策が取りやすいことがメリットになります。

 

 

このように、築古アパート投資の場合は、利回りがあまり高くなく、返済比率が高い物件は、特に気を付けて運営していく必要があります。投資家の傾向としては、資産価値を重視される方で、都内や都内周辺の築古アパートを利回り10%未満で購入してしまう人です。

 

例えば、練馬区 木造アパート 築25年 利回り9%の物件に、日本政策金融公庫 15年 金利2.5%で借りているような方です。最初の4年間はキャッシュフローが、少ないながらもでますが、4年経過後からは、デットクロスに悩まされる物件になる確率が高くなります。

 

まとめ
・築古アパートに融資を付けると4年経過後は、デットクロスを起こしやすい

 

・デットクロスを起こしたら、売却かさらなる償却資産の買い増ししかない

 

・つまり、築古アパートは長期に渡っては、収支のコントロールが難しい

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