事業用資産の買い替え特例の活用について

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相続対策:事業用資産の買い換え特例を使う

相続税の節税対策としては、相続税の課税対象となりうる資産を早い段階から次の世代に移転する「生前贈与」の手法がよく用いられますが、それ以外にもさまざまな節税方法があります。そのうちの一つとして「資産の組み換え」という手法があります。

 

資産の組み換えとは
例えば資産として現金1億円を保有しているとします。これを保有したまま遺産相続が発生すれば、1億円がそのまま課税価格となってしまいますが、この1億円を使ってアパートを建築した場合は、その課税価格となる相続税評価額は半分以下まで圧縮することができます。

 

このように、今現在保有している資産を他の資産に組み換えて節税効果を高める事を言います。

 

すでに不動産を所有している場合の組み換え
先ほどの具体例では、現金資産を評価額が低い不動産に組み替えることで節税効果を発揮しましたが、もしも既に不動産を保有している状態ではどうすれば良いのでしょうか。もしも不動産を売却してしまうと、売買代金が現金として手元に残ってしまうため、不動産を所有しているときよりも高い相続税が課税される恐れが出てきます。

 

そこでこのような場合は、不動産を売却してそれで得たお金で別の不動産に買換えるというという手法があります。

 

なぜ不動産を買い換える必要があるか
例えば、今現在保有している賃貸物件が都心の一等地に存在しているとします。このような場所に建っている賃貸物件は、路線価が高いため土地の評価額が非常に高くなります。それでも、不動産投資上高い利回りを維持できているのであればまだ良いかもしれませんが、もともとの建築コストなどが高く、利回りがそれほど高くないというケースがあります。

 

ここで重要な事は、相続税評価額の計算上、賃貸物件の投資利回りは評価額に影響を与えないと言う事です。

 

つまり、利回りが5%でも10%でも、評価額の計算上は基本的に関係ありません。関係あるのは、土地の場合は路線価、建物の場合は固定資産税評価額であり、その賃貸物件の利回りについては、評価額に直接的な影響がないのです。

 

ということは、路線価が高いエリアで低利回り、すなわち収益率の悪い賃貸物件を保有しているということは、相続税対策上非常に好ましくないのです。

 

そこでこのような場合は、高い相続税が課税されやすい積算評価の高い賃貸物件を売却し、今よりも高利回りの収益性が高い賃貸物件に買換える事で、一定の節税効果を発揮する事ができます。

 

ただ、この資産の組換え方法には一つの課題が残ります。それは、譲渡税です。不動産を買換えるためには、一度売却することになるため、そこで譲渡益が発生し譲渡税が発生してしまいます。

 

また、不動産を売却するためには、不動産屋にも仲介手数料を支払う事になるため、下手をすると買換えた事によって投資資金が目減りしてしまう可能性もあります。そこで、この課題を解決する手段として、次のような特例制度を活用する方法があります。

 

事業用資産の買い換え特例とは
売却した不動産の代わりに別の事業用資産に買換えた場合、一定の要件を満たせば一定割合には譲渡がなかったものとして譲渡所得を計算するという特例です。

 

【譲渡税が課税される金額の計算方法】
1:売った金が買換えた金額以下の場合:売った金額×20%
2:売った金額が買換えた金額を超える場合:売った金額?買換えた金額×80%

 

この制度を使うと買換えた部分については、「投資を継続した」とみなして買い換え時には譲渡税を課税せず、次回の譲渡時まで課税を繰り延べるということになります。この方法を使えば、譲渡税の負担なく資産を組み換えることが可能になります。なお、この制度は個人でも法人でも適用を受ける事が可能ですが、あくまで「事業性」がある場合に限られます。

 

事業用資産の買い換え特例を使う事のメリット、デメリット

 

【メリット】
本特例を適用すれば、譲渡税の負担が大幅に減るため、資金の無駄な流出を抑制できます。また、高収益な賃貸物件に買い換えをすることで、利回りが安定するため出口戦略として将来的な売却がしやすくなります。

 

【デメリット】
特例の適用を受けると、譲渡税の繰り延べを受けた部分の取得費に関しては、譲渡資産の取得費を引き継ぐ事になるため、取得費が少なく計上される事になります。また、課税の繰り延べはできたとしても、取得日については譲渡資産の取得日を引き継がず、買い換え資産の引き渡し日となるため、注意が必要です。

 

資産の組換えは、買い換え特例の適用を受けないと、一旦多額の譲渡税が発生してしまう恐れがあります。そのため、賃貸物件の買い換えを検討している場合については、本特例の適用を受けられるかどうか、事前に適用要件などを細かく確認しておくと良いでしょう。

 

まとめ
・相続対策には、資産の組み換えという手法もある

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