法人から個人への保険の移転と評価引き下げについて

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節税対策:低解約保険を使った評価の引き下げ

節税効率をより高める一つの手段として、保険商品を活用するという方法があります。単に保険商品と言っても、最近ではさまざまなタイプのものがあり、どれをどのように活用するかによって、節税効果が全く違ってきます。

 

そこで今回は保険商品を使った節税対策のうちの一つである「低解約返戻金タイプ」の保険活用法について解説したいと思います。

 

「低解約返戻金タイプ」とは
生命保険にはいくつかの種類がありますが、保険商品によって毎月の保険料が結構違うことに気がつくと思います。この保険料に差額が生じる一つの理由に「解約返戻金」が大きく関わっています。

 

解約返戻金とは、保険契約を途中で解約した場合に払い戻されるお金のことで、支払った保険料に対する解約返戻金の割合を「解約返戻率」と言います。

 

毎月の保険料が安い保険商品は、この解約返戻率が加入当初は非常に「低く」設定されています。そのため、保険会社側からすると短期間で保険を解約されるリスクが減るため、その分保険料を安くしましょう、ということになるのです。

 

このように、保険加入当初の解約返戻率が低い保険タイプのことを、「低解約返戻金タイプ」と言います。

 

では、なぜこの低解約返戻金タイプの保険が節税対策に繋がるのでしょうか。

 

節税効果を発揮させるための2つのポイントとは
相続税を節税する方法を考える際に、ポイントとなるのは次の2点です。

 

1:評価額の引き下げ
2:移転のタイミング

 

この2点に着目していただき、低解約返戻金タイプの保険を活用した節税スキームを見ていきましょう。

 

例えば、1億円の現金をそのままの価格で相続すれば、1億円を課税価格として相続税を計算する事になります。けれども、1億円を使って1億円以下の評価額になる財産に組換えすれば、実質的な財産価値は同じであるにも拘らず、課税される税金は大幅に抑えられます。

 

そして、この効果を最大限発揮できるのが、低解約返戻金タイプの保険商品なのです。今回は「積立型の医療保険」を想定して解説したいと思います。

 

ステップ1:積立て型医療保険に加入する
医療保険は保険料が低い「掛け捨て型」の保険が多くありますが、節税効果を発揮するためには、満期になった際に解約返戻金が支払われる「積立型医療保険」に加入する必要があります。その理由は後ほどわかりますが、この際のポイントは「契約方法」にあります。

 

財産を残したい親が保険の契約者となり、被保険者を子供として保険契約を締結します。要するに、親が保険料を負担して、子供に病気などがあった場合に保険金を受け取る、という主旨の契約内容にすることで、後に大きな節税効果を発揮します。

 

ステップ2:保険料を一括で支払う
保険料は毎月支払うことが多いかもしれませんが、節税効果を最大限引き出すために、保険加入時に保険料を一括で支払います。例えば、保険料総額5000万円の契約であれば、加入時に5000万円を一括で支払います。一般的な保険であれば、保険料を一括払いによって支払うと、分割で支払うよりも保険料を割引してくれるはずです。

 

ステップ3:解約返戻金の推移
上記のような方法で積立型医療保険に加入すると、途中で解約した場合の解約返戻金は、年々減少していく事になります。そして保険契約が「満期になる直前」には、解約返戻金は支払った保険料に対してわずか数パーセントまで落ち込みます。

 

ステップ4:満期を過ぎると解約返戻金が急増する
このように解約返戻金はどんどん減少していきますが、注目すべきは「満期を経過した時」です。この時点まで保険を解約しなければ、解約返戻金はなんと既に支払った保険料を上回る額となるのです。

 

つまり、満期直前と満期後の僅かな期間の差で、戻ってくるお金に極端な価格差が生じるのです。そしてこれが大幅な節税に繋がるポイントとなるのです。

 

ステップ5:満期直前に親が死亡した場合
仮に保険の満期直前に親が死亡したとします。保険契約も被相続人の財産ですので、被保険者である子供が保険契約を相続する事になり「相続税」が発生します。

 

ポイントはこの際の「相続税評価額」です。

 

この場合、相続税評価額はその時の「解約返戻金」に応じて評価されるのです。つまり、満期直前の非常に低い解約返戻金をベースに相続税が計算される事になるのです。

 

ステップ6:満期を迎える
満期直前の非常に低い評価額で算定した相続税を支払ってすぐに保険の満期を迎えると、保険料相当の解約返戻金が子供に入ってくる事になり、結果としてかなりの節税となります。つまり、親が保険契約の満期近くに死亡すればするほど、この節税効果はより高まるのです。

 

ステップ7:万が一、親が満期を過ぎても存命の場合
親の死期はコントロールできないため、満期を過ぎても存命である可能性もあります。
この場合は、一旦保険料相当額の満期金の払い戻しを受けた上で、再度同じ方法で保険を契約し直す事になります。

 

これが低解約返戻金タイプの保険を活用した節税対策のスキームとなります。

 

まとめ
・解約時に戻るお金が少なければ評価を下げることができ、かつ満期まで保有すると支払い以上の額が戻ってくるので、相続対策として有効な対策のひとつ

 

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