投資する物件を調査する上で、絶対に見落としてはいけないのが「違反建築」です。違反建築とはその名の通り、建築基準法に適合していない違反した建築物のことをいいます。
「違反建築なんて滅多にないのでは?」と思うかもしれませんが、実は築年数が古い物件の中には建築確認を受けた上で着工してはいるものの、竣工後に完了検査を受けていない物件(特に戸建て、関西の物件)が多く存在しており、そうした物件の中には違反建築に該当するものが混じっているのです。
そこで今回は、違反建築のよくあるケースと見分け方について、全2回に分けて解説したいと思います。
建ぺい率オーバー
市場に出回っている違法建築の中でも、非常に多いのが建ぺい率オーバーの物件です。
建ぺい率とは、敷地面積に対する建築面積の割合のことで、建築面積とは簡単にいうと建築物の1階部分の面積に軒、ひさし、出窓といった1mを超えた部分を加算した合計面積のことをいいます。
建ぺい率は都市計画や建物の構造などに従って予め決められていて、(おおむね30~80%程度)建物が密集しないよう住環境の調整を図っているのです。
建ぺい率がオーバーしている主な原因には、次のようなケースがあります。
・建築確認申請時とは違う設計図面で施工している
・完成後、違法な増築を行っている
チェックポイント1:キャンティバレー構造に注意
建ぺい率に違反している建物の多くは、建築面積に含まれるべき部分が計算に含まれていないために、建ぺい率をオーバーしているケースが多く見受けられます。
キャンティバレー構造という、片側だけが固定されている片持ち式の構造で作ったベランダや共用廊下は、本来であれば建ぺい率の計算における建築面積から除外されます。
ところが、キャンティバレー構造は片側に大きな負荷がかかることから、強靭な重量鉄骨の壁などで支える必要性があり建築費が高くつくため、建築確認申請時にキャンティレバー構造で申請し、実際の施工はそうなっていないケースが多いのです。
現地を確認した際に、ベランダなどが独立柱で支えられていたら、建築面積に含まれるため、建ぺい率をオーバーしていないか確認する必要があります。
チェックポイント2:設計図面で確認する
建ぺい率というと、登記簿の1階部分の面積で計算してしまう方がいますが、キャンティバレー構造になっていない共用廊下やベランダ部分の面積も含めて計算しなければなりません。
そこで必要になってくるのが「設計図面」です。
設計図面を見て含まれるべき建築面積を正しく計算して、建ぺい率の基準を満たしているのかどうか確認をします。設計図面がない、または、正確な面積が導き出せないといった場合は、現地で測量を行って確認するしかありません。
容積率オーバー
容積率とは敷地面積に対する延べ床面積の割合のことをいいます。都市計画における用途地域ごとに50~1300%の範囲で決められており、容積率が大きければ大きいほど、よりたくさんの部屋を作れるため、賃貸物件としては収益が上がりやすくなります。
容積率は人口をコントロールするために設けられている基準とも言われており、容積率を超える床面積のある物件を建てることはできません。
1階が事務所の物件は要注意
古い物件で、1階部分が事務所になっている物件には注意が必要です。1階の事務所部分が新築時は駐車場として届出ている場合、当時の容積率には1階部分の面積が含まれていないため、事務所部分も容積率の計算に含めるとオーバーしてしまう可能性があります。
地下室やビルトインガレージなどについても、次のような緩和措置はあるものの延べ床面積に含めて計算をする必要があるため注意が必要です。
地下室:延べ床面積の1/3を上限に除外可能
ビルトインガレージ:延べ床面積の1/5を上限に除外可能
採光不良
建築基準法では、一定の住環境を保つために居室面積の1/7以上の採光に必要な開口部、つまり窓の設置が義務付けられています。
採光というと一般的な認識としては「日当たり」をイメージするかと思いますが、建築基準法における採光とは「天空光」の事を指し、直射日光以外の光の事を意味する点に注意が必要です。有効採光面積を算出するためには複雑な計算をしなければならないため、開口部の不足が疑われる物件については、建築士に現地を確認してもらう必要があります。
違法増築
建築基準法では、10uを超える面積を増築する場合は事前に建築確認申請をしなければなりません。ところが実際は、未申請のまま増築されている収益物件が多々あります。
そもそも増築の申請をするためには、既存の建物が「検査済」であることが前提です。
建築確認申請をして着工したのち、竣工後に検査申請をしていない建物がとても多いため、増築の申請要件を満たせないことから、違法増築が増えたと考えられます。
違法増築は居住部分よりも店舗や事務所利用されている部分に多く見られ、営業上の収益を上げるために、倉庫などを違法に増築されている建物がありますので注意が必要です。
違法増築の確認方法
違法増築については、登記簿の情報と建築計画概要書によって確認することができます。違法増築の場合、そのまま増築部分は未登記になっているケースが多いため、登記簿謄本の面積と現地の面積を見比べて、登記簿謄本にない部分が存在している場合は違法増築の可能性があります。
次に、物件の所在地を管轄する市区町村役場の建築課などで、建築計画概要書の写しを入手します。建築計画概要書に建築当時の平面図が添付されているため、それと現況を見比べて増築されているようであれば、増築の建築確認申請が出ているかそのまま窓口で確認し、申請が出ていなければ違法増築です。
違法増築については、行政側から取り壊し命令が出るケースもあるため、知らずに購入してしまうと大変なことになります。間違えて購入しないよう、上記のように必ず確認をしましょう。