家賃滞納されても売上となる
家賃の滞納があった場合、経理上どのように処理しなければならいかも知っておきましょう。
なぜなら、賃貸経営では良く発生することと、勘違いされている大家が多いためです。
家賃滞納金額の経理上の扱い
@多くの個人・企業は売上計上する
家賃は、滞納して入金がなかった場合には、売上に計上しなくて良いと考えている大家にたまにお会いします。現金主義会計というほとんど採用しない方法を取っていない限りは、滞納家賃の金額を売上計上するしかありません。
現金主義会計を採用していない場合、発生主義会計を採用しています。発生主義会計では、現金の収支には関係なく、価値の移動が発生したタイミングで収支を認識するという考え方になります。
簡単に噛み砕くと、支払の有無にかかわらず、部屋を貸して、借主が住んでいるという状態で日々売上が発生しているという考え方です。
何カ月滞納があっても関係なく、滞納家賃分に関しても売上計上することになります。
つまり、入金がないにも関わらず売上計上され課税対象となり、税金を払うことになります。よく言われるのは、「空室より滞納の方が数倍悪い」というのも納得できるでしょう。
A滞納回収が確実にできない場合
滞納に関しても売上計上するのですが、さすがに滞納家賃の回収の見込みがなくなった場合は、貸倒損失として計上できます。
法人と個人の事業的規模の大家であれば、法律的には請求権は残っていますが、回収できないケース場合は、貸倒要件を満たせば、要件を満たした年の経費(貸倒損失)として処理することができます。
個人の事業的規模でない大家は、収入計上年まで遡って更正の請求が必要となり、面倒な作業となります。
確定申告をやり直すことを「更正の請求」と言いますが、 申告期限から1年以内でないとできません。
ただし、貸倒損失として計上するには、かなりの理由が必要となります。税務署は、税金をいかに多く取れるかを考えている組織ですので、賃貸経営者が貸倒損失で経費化することが本当に妥当かを厳しくみてきます。税務調査では、確実にみられるポイントになります。
貸倒損失として認めれるには、下記のいずれかの条件が必要となります。
・法律上の貸倒れ:会社更生、民事再生、破産、 未収賃料が債務免除を書面で通知した、等の法律上の貸倒れの場合。
・事実上の貸倒れ:借主の資産状況や支払能力等から見て、 担保を処分した後でも回収できないことが明らかになった場合。
・形式上の貸倒れ(いずれか)
−借主が部屋を出て行った後1年以上経過している場合
−債権の取立費用額>未収債権額⇒要は、回収に関わる費用が滞納家賃を上回る場合
法律上の貸倒れではあればわかりやすいのですが、多くの場合は、払いたくないということで滞納し、そのまま居座るか、出ていって行方不明などのケースが多いかと思います。対応としては、借主が部屋を出ていった後1年以上経過してから形式上の貸倒れで処理するか、借主に対して内容証明で債権放棄を通知して、法律上の貸倒れで処理する、等になります。
入居者の資産状況を把握することは現実的に難しいことから、事実上の貸倒れは使いにくいでしょう。
税務調査があった時に根拠書類が必要になるので、滞納者への内容証明郵便などはしっかりと取っておき、税務署に見せられるようにし置きましょう。
B現金主義を採用している場合
現金主義を採用している場合のみ、滞納家賃を売上に計上しなくて構いません。
ただし、現金主義を採用できる基準はやや厳しいです。
現金主義を採用できる基準は、「その年の前々年の不動産所得及び事業所得の金額の合計額が300万円以下である青色申告者」となります。小規模のアパート1棟の規模であれば可能です。
現金主義による所得計算とは、現実に収受した金額や支払った金額を収入金額や必要経費とするものです。本来、収入金額や必要経費は未収や未払いであっても計上しなければなりませんが、現金主義の場合はその必要がありません。
まとめ
現金主義会計を採用されている方は稀ですので、基本は滞納も売上に計上しなければなりません。貸倒れ損失計上するまでは、経費化できないので、空室より滞納の方がデメリットが大きいと認識して対応する必要があります。
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