大空室時代
賃貸経営にとって、一番大きな問題となる空室が年々増えており、もはや大空室時代と呼べるようになってきました。なぜ、このようなことが起きるのか、背景と具体的な数字としても捉えておき、不動産投資を始める前に空室対策の基本を身に着け、賃貸経営開始後は、空室対策を即実践できるような力が確実に求められる時代となっています。
空室の状況
総務省統計局の平成25年度の調査結果によると、「空き家の数は、調査の度に増加し、平成5年に448万戸だったところ、平成25年では820万戸と、この20年間で1.8倍になっています。また、空き家率でみると、平成10年に1割を超え11.5%となり、その後も一貫して上昇を続けています」と書かれています。
図表1-1は、総住宅数の空き家となりますので、共同住宅に加え、一戸建て、長屋建ても含まれています。全国に、800万戸を超える空き家があるのは、賃貸経営にとって大変な事実です。
そして、図表4では、賃貸用住宅の空き家について建築時期別の戸数となります。こちらの見方としては、築年数が、20年以上経過した古い物件の空き家がかなりあるということです。平成2年までの空き家の総数が、全国で120万戸程度あります。
このような古い物件が市場から退場せずに、残り続けると、より家賃の下落などの競争が激化していくことが容易に想像できます。
日本人は、どうしても新築が大好きですので、築年数が経過した物件は、人気がなく家賃を下げなければ空き家が増え続ける傾向となります。現在でも800万戸以上の空室がありますが、今後も増えることがあっても減らない状況となっているのが、今後の、賃貸経営を厳しくしている要因です。
※出展:総務省統計局 平成25年住宅・土地統計調査
なぜ新築着工が減らないのか
日本では、先進国で通常の施策としてある不動産の供給調整の仕組みがないのと、賃貸住宅を建築するモチベーションが与えられていることが原因となっています。
アメリカや欧米では、賃貸住宅の供給数を国や市レベルが総量でコントロールする仕組みが存在しており、賃貸マーケットが崩れない仕組みとなっています。そのようにコントロールすることで、不動産価格の維持や家賃水準の維持することが、乱開発を食い止め、社会秩序を保つことにも有効であることを知っているからです。
しかしながら、そのような供給をコントロール術が日本では、存在しません。いまだに、貸家が不足していた時代と同じ法制度になっていて、借り手が優位な時代に、借り手ばかりを保護する法律になっているのも、おかしな状況です。
日本は、行きつくところまで、いかないと議論がまともにされないのが、問題といえるでしょう。
そして、もうひとつの賃貸住宅を建築する背景のひとつとして、金利が低い環境に置かれていることと、銀行が担保との取れる賃貸事業に積極的に融資をしているからです。他に有効な投資がないこともあって、賃貸経営の建築が盛んにおこなわれています。
また、相続税改正により、基礎控除額の 引き下げ、最高税率の引き上げを受けて、相続対策とし て賃貸住宅建設需要が大きく高まったことがあります。
このような流れがあるため、新築の賃貸住宅を止める制度がない中で、建築するモチベーションが高まれば、自然と供給は増えていくことになります。
賃貸住宅を建築する人も空室が増え続けていることは知ってはいるものの、新築好きの日本人のため、新築した物件は、すぐに埋まり、空室の荒波にもまれるのは、だいぶ先になるから見ないふりをしているだけです。
今後、空き家についての議論が深まり、少子高齢化の進展や人口減少などの悪影響が一気に噴出して、防災や景観などの社会問題となるまでは、なかなか政策が変更されずらいと考えています。
大空室時代の不動産投資・賃貸経営とは
空室対策が、賃貸経営のカギであり、賃貸経営上最も身につけなければならない知識です。大空室時代の不動産投資では、不動産投資をする前から空室対策のノウハウを習得しなければなりません。投資するエリア、間取りと競合との関係を瞬時に分析して、業者から提示される利回りが実現可能性があるのかを、判断しないといけないからです。
もちろん、賃貸経営が始まれば、空室対策はまったなしです。一旦発生した空室期間の売り上げは、二度と入りません。一日でも早く埋めるための空室対策ノウハウを身に着けて、実践する必要があるのです。1日、先延ばしにすれば、その分だけどんどん収入が減っていきます。
満室経営を目指すのであれば、不動産投資前から空室対策は始まっていることを認識したうえで、不動産投資を開始することをお勧めします。
まとめ
・大空室時代は、すでに始まっている
・空室対策は、不動産投資前から始まっている
・賃貸経営開始後、ありとあらゆる手で、空室対策をしていく必要がある
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